【生徒に何を残せるのか】
台風や地震など、大きな災害が身近になり、いろいろ考えさせられます家や生活や思い出の品を失った方々の痛みは、どれほどかと思います
もし私が、住む家や、大事な品物や、思い出の場所や、ピアノ教室を含め築き上げてきた何もかもを失って、身一つになったとしたら……と、考えてみました
もちろん、その時感じるであろう痛みや苦しみは、想像もできません
何もかも失って、持つものが、その命だけになったとき……
人の中に残るのは、「思い」と「つながり」と「身に着けた技」だけになるでしょう
そのうちの「つながり」については、今日の話の趣旨とずれるので、横におかせていただきますが
こと、音楽にだけ関して、残された「思い」というのは、「あの曲を聴くと元気になる」とか「ああ、やっぱりピアノの音って好きだな~」とか
「きっとまたいつか、ピアノを楽しめる環境に戻れるようになりたい!」という希望です
そして「身に着けた技……「ピアノを弾くことができる」という技術は、モノを失っても失うことはないと思うんです
私たち、ピアノ指導者は、子どもたちの人生の一時期を一緒に過ごし、ピアノを教えますが
モノを売る仕事ではないので、ハッキリとした形のあるものを残すことはできません
生徒が思うように集まらなかったり、せっかく育てた生徒が辞めてしまったとき……「人に必要とされる『モノ』を作れる人ってすごいな、いいな、それに比べて、ピアノを教える仕事は、成果が見えにくいから、ちょっと不景気になると、必要とされなくなる」
落ち込んでそう思ったことも、かつてありました
でも、何もかも失っても残る「思い」や「技」を、時間をかけて生徒たちに身に着けてもらえるこの仕事って、すっごく尊くて素敵だなと、改めて感じました
こんな時代だからこそ、目には見えないけれど、成果は見えにくいけれど、「音楽っていいよ!」「ピアノが弾けるって素敵だよ!」そういったことを、長い時間をかけて生徒たちの中に残していきたいと思います
